古いFRPタンクをレストアする その1

 

 まずは現物を見てみます。これです。

 だいぶくたびれていますが,ファンには垂涎の一品です。

 一時,ガルクラフトに,このタンクが同時に三つあったことがあり,

日本中のBIMOTAタンクが集まっているのではないかとすら思いま

した(全部レプリカじゃないところが凄い)。

 裏の状況です。

 二つ,四角い痕がありますね。ここに燃料のコックが付いていた

らしいのです。

 今回,この穴をふさぎ,ノーマルの位置に戻すように依頼したそう

なのですが,あろうことか,その四角い穴にあてものをして,FRPの

樹脂をダダ流ししたようなのです。

 これはちょっとあまりにもひどい処置であると言わざるを得ません。

 FRPは直訳すれば繊維強化プラスチックですから,ガラスやカーボン

などの織物に,この樹脂が染み込むことでその特性が発揮される訳です。

 しかも樹脂の量は最少にとどめた方が強靭な製品になります。

 このように,樹脂だけ流し込んでも,もろいばかりで,ガソリンを入れる

器がこれでは,危なくてしょうがありません。

 右側後方の補修です。

 まあこれは仕方ないことでもあるのですが,ガラスマットを貼り付けた

上にゲルコートを塗っています。

 マットの目が出てしまっていますし,面も出ていません。

 お客さんとしては,納得できないので,これも直してほしいということです。

 タンク前方の裏側です。

 わかりにくいとは思いますが,パテを盛った上にゲルコートを塗って

いるだけで,見るも無残な状況です。

 給油口からタンクの中を覗いてみます。

 黄色く見えるのが樹脂です。

 厚くたまるように流し込んだ為,樹脂が硬化する時に反応が進みすぎ

てしまい,全面にヒビが入って剥がれかかっています。

 実際,タンクを振ると,「カラカラ」と音がします。

 今回のご依頼は,このタンクの外側は勿論,中も全てきれいに掃除

するということです。

 また,なるべくオリジナルの材料を生かしつつ,更に補強として,内側に

二層ほどFRPを積層してほしいということです。

 これはかなりの大手術になります。

 こうなってしまうと,引き受けてくれるショップはほぼ無さそうです。

 ウチでも,まあ変な話ですが,施工の時間を考えるとほとんど利益は

ありませんし(笑),おいしい仕事ではありませんが,FRPタンクに関して

思うところがありまして,丁度良い機会なので,作業の記録を残しておいて,

このように発表しようと考えました。

 念の為申し上げておきますが,私はこのタンクを前に補修した方を非難

する気は毛頭ございません。

 何故なら,まともな補修をしようと思ったらタンクを割らなければならないか

らです。それには型を作る必要があり,費用が莫大なものになってしまいます。

 程度の良いBIMOTAタンクが買えるような金額になってしまっては本末転倒

ですし,車両が余裕で買える見積りを出すのもどうかと思います。

 だから普通の神経ならこの仕事は受けないと思います(笑)。

 今後,同じような仕事を持ち込まれる方は,相当の金額を覚悟して頂きたい(笑)。

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